独立するにあたり、自分で収益を上げる必要があるわけですが、「個人事業主」でいくか、「マイクロ法人」を設立するかを悩みました。というのも、東京の持ちマンションから得られる賃貸収入に対して社会保険(健康保険、年金)を負担する必要があり、ここをどうやって最適化すればよいかを検討する必要があると思ったからです。
税負担や確定申告の手間を中心に、以下の順番で検討・整理を進めました。
個人事業主/マイクロ法人それぞれの税負担
まずは税負担がどう違うのかについて検討しました。
個人事業主の場合、所得額に応じて所得税率が変わり、同時に社会保険の負担額も大きく変わることになります。
マイクロ法人の場合は、法人から支給する社員給与額(一人社長の想定なので、要は私宛の給与)により、法人と個人が折半するベースの社会保険料が決まります。加えて、マイクロ法人は、法人としての収益がゼロであっても、最低限負担すべき法人住民税が7万円ほどありますので、この分の負担も考慮に入れる必要があります。
仮に、年間400万円の所得を想定して、個人事業主/マイクロ法人それぞれの税負担はおおよそ以下の通りです。既婚、子供1人想定で基礎控除や扶養控除も考慮しています。
個人事業主 | マイクロ法人 | |
額面収入 | ¥4,000,000 | ¥4,000,000 |
経費 | ▲\1,000,000 | ▲\1,000,000 |
従業員給与 | ー | ▲¥540,000 |
営業利益(①) | \3,000,000 | \2,460,000 |
所得控除額(②) | ▲¥860,000 (基礎控除43万+配偶者控除38万) | ー |
社会保険負担(③) | ▲¥630,000 (国民年金20万+国民健康保険43万) | ▲\144,000 |
課税所得(①-②-③) | ¥1,510,000 | \2,316,000 |
所得税(④) | ▲\75,500 (5%) | ▲\347,400 (15%) |
住民税(⑤) | ▲\151,000 (10%) | ▲¥232,120 (7%⁺7万円) |
事業税(6) | ー | ▲¥92,640 (3.4%) |
最終利益=手元に残るお金 (①-③-④-⑤-⑥) | \2,143,500 (収入の54%) | ¥1,643,840 (収入の41%) |
*マイクロ法人資本金は800万円以下、かつ、従業員(=私)に毎月¥45,000の給与支払いを想定
*個人事業ではマンション賃貸1室分で想定するので、不動産所得において「業務的規模」となり、青色申告は不可。なので、青色申告控除の¥650,000は利用できない想定
これだけ見ると、法人設立よりも個人事業主の方が手元に残る金額が少ない?と思いがち。加えて、法人で最終的に手元に残るお金は私個人のものではなく法人のものなので、160万円が残ってもあまり嬉しくない。法人の最終利益164万円に年間給与54万円を加えても合計219万円であり、個人事業主とほぼ変わらない。。
個人事業主のメリット/デメリット
メリット
確定申告はさほど難しくない
青色申告を前提としないので、簿記ソフトを用いて複式簿記で帳簿をつける必要がなく、サラリーマン時代に実施していた確定申告のノウハウで自分で実施できる。
確定申告から解放されるためには、会計ソフトの弥生会計などを使ってみるとと思います。
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事業に必要な経費計上もできる
事業に関係するもののみを経費計上することはもちろんですが、怪しい節税をするつもりはないので、ここはOK。日々の経費管理もExcel管理で十分できそう。
個人事業主を始める手続きが難しくない
個人事業主としての開業届は必要ですが、マイクロ法人のように定款準備や設立費用が不要。登録費用が特に掛からない点もメリットです。
デメリット
税金負担が重い
これに尽きます。個人事業主として頑張れば頑張るほど所得税や住民税、社会保険負担が重くなります。これだと、サラリーマン時代と何ら変わらない。。
社会的信用が限定的?
色々なサイトでこの点が指摘されていますが、個人として事業拡張をそこまで主眼に置いていない私にとっては、この点のデメリットは限定的。銀行借入するような規模で事業をするのであれば法人化を検討したほうが良いかなと思っています。
マイクロ法人のメリット/デメリット
メリット
経費負担や税負担の手段が多様
個人事業主と比較して、経費負担できる範囲が広い点はメリット。上記の想定し直りには織り込みませんでしたが、小規模企業共済や役員保険など、法人経費として計上できて課税所得を圧縮する手段は個人事業主よりも多い。
繰越欠損金の繰越期間が9年と長い
法人決算で赤字だった場合は、その赤字を欠損金として翌年度以降に繰り延べ、将来の利益と相殺して税金を計算することができます。
個人事業主でも両方とも欠損金の処理ができますが、欠損金を繰り延べることができる長さが異なる点がポイント。青色申告している個人事業主の場合は、欠損金は3年間繰り越すことができますが、法人の場合には、欠損金の繰り越し期間は10年間。長期的にみると、法人の方が税務管理がしやすいと言えます。
デメリット
法人維持の管理に手間取りそう
法人決算は一般的には税理士に委託して期末決算を締める必要がある。ここだけでも経費負担として数十万円要する。
加えて、複式帳簿管理が必須であり、個人としての経理知識(一応、日商簿記2級取得)はあるものの、期末決算をできれば一人で対応したい私にとっては、法人決算は悩みどころ。
法人収益が出なくても、法人住民税負担(7万円)が必要
ここは致し方ないと考えています。個人事業主としてのトータルの税負担よりも法人税負担が低くなるのであればOKとの考えです。
法人に入れた資本金を自由に活用できない
法人としての収益を見込める場合は特に悩ましいです。個人の資金繰りと法人資金繰りの両方を見ながら管理していく手間もありそうです。一応、法人から個人への貸付という手段はありそうですが、法人/個人のそれぞれに所得税が発生するので、資金繰りは要管理です。
結論:両建てで進めてみる
ここまで長々整理しておきながら恐縮ですが、結論としては両建てで進めてみようと思います。
マイクロ法人のメリットである「税負担の軽減」「経理管理のしやすさ」と個人事業主で所属税率が上がらない程度に頑張ることで、トータルの税負担を圧縮できそうです。
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